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木谷宜弘資料館

TIC運動

TIC運動の原点・子供民生委員活動の歴史

*木谷先生の研究報告(2002年日本福祉教育・ボランティア学習学校)より引用。
昭和21(1946)年、徳島駅前や闇市での浮浪児の姿を目の当たりにした徳島県民生委員連盟事務局(徳島県社協の前身のひとつ)の平岡国市氏は、「すべてのお友達を幸福にしましょう」をスローガンにした子供の組織を育て、子供たちが主体となって地域課題と取り組んでいけば、やがて平和と福祉の心が根付いてくると確信した。
そこで、大人の民生委員の支援で町内会単位に子供民生会を組織することを提案し、併せて学校教員の理解と協力のもと小・中学校の教育力を期待した。

この平岡氏の呼び掛けにより昭和21年7月、西祖谷山村立西岡小学校子供民生委員会が設立した。
活動の一例としては、集団登校、神社清掃、障がい児を持つ家庭への支援活動、募金、農繁期の手伝いなどである。そして、数年のうちに県内すべての小・中学校において子供民生委員制度が設立され、昭和30年には県内で約1万人が子供民生委員として活動した。

平岡氏は、子供の生活規範として具体的な5つの実行項目を決め、その実践をすすめた。

子供民生委員活動の理念
一、お友達は皆仲よく致しましょう。
一、困った人は助けましょう。
一、先生の教えは必ず守りましょう。
一、丈夫で勉強しましょう。働きましょう。
一、世の中のためになる人になりましょう。

全県運動として残した足跡

子供民生活動の基盤は、小地域における子供民生会の実践にあり、同時に平和と福祉の運動としての実践であった。大人たちでもなし得なかった足跡の数々を見ると、驚嘆に値する。
子供平和記念塔(昭和23年)
県内17万人の子供たちが集めた38万円(当時)と礎石に使う小石(徳島のほか全国、海外からも送られてきた)をもとに建てられた記念塔。現天皇陛下が皇太子時代にお寄せくださった那智の黒石も含まれている。
県内初の知的障がい児施設(昭和27年)、県内初の肢体不自由児施設(昭和34年)
両施設とも県内の子供民生委員の呼び掛け、子供たちからの献金をもとに県知事に要請があり、完成した。
その他
欠食児問題の解決に向けて立ち上がる(昭和29年)、国際子供親善文化展覧会開催(昭和30年)、時間にルーズな徳島県人のために徳島駅に大時計設置(昭和31年)、子供の遊び場づくり運動を全県的に実施(昭和33年)、眉山山頂に徳島希望の鐘建設(昭和34年)。

子供民生委員活動の成果

  • 福祉と教育を理論ではなく、子供たちの実践の場において接近させた。地域の大人の民生委員と学校教員が協働して子供民生委員活動を支えていくことの重要生を示した。
  •  活動の基盤を地域に置き、子供たち自身が地域課題を発見し、その解決活動に取り組むという実践を創始した。
  • 子供と大人のそれぞれの活動の相乗効果によって地域の市民力、自治力が培われ、地域のネットワーク化と町づくりの源泉となった。

木谷先生の関わり方

昭和32(1957)年、平岡国市氏の引退に伴い、徳島県社協職員であった木谷先生が実務を引き継ぎ、県子供民生委員連盟の事務局を担当。すでに地域子供民生会や学校民生委員会の運営は軌道に乗っており、木谷先生は郡市子供民生委員連絡会議や学校民生委員会の要請を受け、県内を奔走した。
年3回の「子供民生委員新聞」の編集発刊、新しく選任された子供民生委員用の入門書「子ども民生委員指導ノート」の発刊、県大会や指導者研修会の開催に専念。木谷先生は昭和38年に全社協に移るまで関わった。

歴史的経過

子供民生活動委員は、昭和35年以降の受験戦争の激化に伴い、昭和40年代に次々に消滅。
(現在では石井町立藍畑小学校1校のみ)。

平成13(2001)年から3年間、徳島県では徳島県社会福祉協議会・とくしまボランティア推進センターは、10代のボランティア活動「藍・あい・愛運動」を展開。県内25市町村社協が推進モデル事業として取り組んだ。木谷先生が中心となって、この運動は推進された。

平成16(2004)年には、「藍・あい・愛運動」の発展形としてTIC(Teens In Community)運動がスタート。木谷先生はTIC運動推進委員会委員長として尽力、各地の実践の場にも足を運んだ。現在もTIC運動は進行中である。

TIC運動の主旨

  • 10代の少年少女が主役となり、「ティーンズボランティア」として自分たちの地域を活動基盤にグループを作り、自ら計画したボランティア活動を行う。
  • 徳島県内各市町村社協が募集し、社協コーディネーターのもと、「ティーンズボランティア」を支援するために研修を受けた地域の大人が「サポーター」となり、子どもたちを支援する。「サポーター」ももちろんボランティアである。

TIC運動を推進するための考え方

1. 「ティーンズボランティア」が主役
「指示待ち人間」や「パラサイト型人間」と呼ばれるなど、若者には自己中心的、責任転嫁、欲望肥大など大人に成長しきれていない発達性の問題が存在する。これは、現代青少年の負の側面である。
しかし、自分探しのためにボランティア活動に参加し、その活動を通じて発見した地域社会の課題と果敢に取り組んでいる10代もいる。
かつて子供民生委員活動が全県下に波及して実践されたように、10代の若者たちが一人でも多くティーンズボランティアとなり、社会活動へ参加する環境づくりを推進しなければならない。

2. 「サポーター」の協力態勢づくり
子供民生委員活動では、大人の民生委員が良き相談相手として温かい手を差し伸べた。
TIC運動を支援するサポーターには、指導者としてではなく、ボランティア活動へ導き、相談相手として、よき理解者として側面からの惜しみない応援が求められる。
そのためには地域の大人であるサポーターの育成が重要であり、県市町村社協が主催する研修会への参加を促進し、10代世代の心理とサポート手法について学んでもらう必要がある。
また、社協職員のコーディネートも重要であり、ボランティアコーディネーター研修にも力を注ぐ必要がある。

3. 地域社会でのボランティア活動
地域社会は、10代世代が自己発見と社会の担い手として自覚を持つために通らなければならない「トンネル」である。また、地域社会は10代世代が育つ栄養素を持つ存在でもある。
【栄養素1】それは自然環境である。自然にふれることで生命の誕生と喪失の連鎖を実感することができる。自然への畏敬を悟り、自然環境保全の重要さに気づくことができる。
【栄養素2】それは先人が築いた文化財である。文化財にふれることで先人の偉大さを知り、知恵と努力に多くのことを学ぶことができる。
それらの文化財を伝承する大切さを知り、新しい文化を創造する意欲が起こる。
【栄養素3】それは地域に暮らす人たちである。多くの人とふれあうことで人間関係を磨くことができる。ハンディキャップとつきあいながらも雄々しく生きている人や生活の知恵袋を持った高齢者から学ぶ機会を多く持つこと。自分より年下の子どもたちに優しく接することも人間関係の構築につながる。

4. まとめ
10代世代にとって地域でなくては学べないことが多くある。また、学んではいけないことも多くある。その現実に立ち向かうことによって初めて体得し、アイデンティティを自分のものにすることができる。
現在は、地域が崩壊している状況といえるかもしれないが、TIC運動のキーポイントは「サポーター組織の活性化によるティーンズボランティアの育成」であり、地域の大人たちが主体性を発揮することがティーンズボランティアの最初のモデルとなる。
また、社協、ボランティアセンターがティーンズボランティア募集、サポーター募集、関係機関施設団体への協力依頼などの役割に力を注ぐことで、サポーターの教育力は向上し、ティーンズボランティアの可能性が引き出され、彼らがコミュニティづくりのパートナーとなることができる。
そのためにも、県民の総力でTIC運動に取り組むことが切に望まれる。